前回のブログで、基礎合奏に関して記事を書かせていただきました。その中で初見合奏について軽く触れたので、今回は思い切って掘り下げていこうと思います。
吹奏楽をやっていると”必ず”と言っていいほどマーチに触れる機会があるでしょう。そして、マーチといってもコンサート作品として鑑賞を目的とした「コンサートマーチ」や行進やパレードを目的とした「パレードマーチ」が存在します。いづれも一定のリズムの上に曲が展開されるなど多くの共通点があります。今回はその2つのマーチの歴史やその特徴、そしてなぜ私が初見合奏にマーチをお勧めするのかお伝えしたいと思います。
マーチの歴史と特徴
吹奏楽コンクールで見受けられるマーチのほとんどは俗にいう「パレードマーチ」というものです。ですが、マーチというものは古来では軍隊の行進曲として用いられてきました。まずは、その歴史から説明していきましょう。
マーチの起源
マーチというのは軍隊だけでなく、その国の成り立ちや歴史と大きく結びついています。特に第二次世界大戦よりも前の時代のマーチには独立や革命などのナショナリズムが関連していると言えます。
16世紀初期:ヨーロッパ諸国には各国特有のドラム・コールが存在しており、これは国や軍を識別する一つの手段でもありました。そのため、兵士が行進する際にも演奏されたそうです。
17世紀〜18世紀:この時代のマーチはとても実用的ですが短命なマーチが多かったそうです。オペラやオラトリオから有名な旋律を用いて、楽長が必要に応じてオーケストラなどの曲をマーチ風に編曲することが多かったそうです。
18世紀末〜19世紀初期:フランス革命からナポレオン戦争を経て軍隊行進曲の需要が増加します。それと同時に現在の吹奏楽の演奏形態が確立され、現在と同じ形でのマーチ演奏が可能となりました。
19世紀:行進曲というものが軍の占有物から民衆のものへと移行していきます。「ロレーヌ」や「勝利の父」、「ワシントン・グレイス」などもこの時代の代表曲といえます。
19世紀後期〜20世紀中期:行進曲の黄金時代とも言われる時期になります。テレビや映画がまだ普及していなかった当時、”マーチ王”の異名を持つJ.P.スーザが率いるスーザ・バンドは大人気でした。「星条旗よ永遠なれ」や「美中の美」、「ワシントン・ポスト」なども有名ですね。
20世紀中期〜後期:映画やテレビなどのメディアが発達し、それに伴いオリンピックやスポーツのための行進曲が発展しました。東京オリンピックでは古関裕而の「オリンピック・マーチ」などが有名です。しかし、ポップス曲の流行によって行進曲の人気は薄れていきます。
現在:コンサート用に作曲されたマーチ、いわゆる「コンサートマーチ」が作曲されるようになりました。ヴァン・デル・ローストの「アルセナール」などはコンサートマーチの代名詞と言えるほどの名曲ですね。
マーチのならではの特徴
マーチには約束事が数多く存在し、ほとんどのマーチに共通します。初めのうちは何が何だかよくわからないことが多く混乱するかもしれません。しかし、逆に考えれば”マーチはルールを守れば上手くなる”ということなのです。多くの吹奏楽奏者は意識していないと思うので、ルールをしっかりと覚えましょう。
そのルールをいくつか挙げてみましょう。
- 構成が同一(前奏→第1マーチ→第2マーチ→トリオ→ブレイクアップ→第3マーチ〔再現部〕)
- 基本的に2拍子系のリズム(2/2や2/4、6/8の拍子が多い)
- トリオは必ず下属調になる
- 一定のリズム(テンポ)で刻まれる
といったところでしょうか。細かいことを言えばまだまだありますが、大きなところで言うとこの3つ程度だと思います。
また、マーチは吹奏楽の基本とも言えます。そのほとんどが声部の構成が非常に単純でわかりやすく、初心者でも馴染みやすい楽曲となっています。そのため、私は初見合奏などの練習では基礎の力を固めるためにマーチが好んで使用します。指導者側からしても”ズレ”や”譜読みミス”が明確になるのでやりやすいと思います。また、調性もほとんどEs-durやB♭-dur、F-durになっていて、譜読みしやすいのもお勧めしたい特徴の一つです。
楽器初心者でも楽しめる楽曲
多くの吹奏楽経験者は中学から始めると思いますが、高校や大学、社会人から始める人も少なくないと思います。そんな方にA.リードの曲なんかを吹かせても難しい上に大変で飽きてしまうこともあるでしょう。ですが、「六甲おろし」や「栄冠は君に輝く」などの名曲はマーチ形式で作曲されており、とても馴染みやすいと言えます。現に吹奏楽コンクールの全国常連校である大阪府立淀川工科高等学校(通称:淀工)でも入部してすぐにマーチを吹かせるそうです。初心者も経験者もいる中で敢えて”マーチ”を選択するのはそれほど基礎としてマーチが大切だと言うことでしょう。
多くの人に愛されてきた”マーチ”、あなたもぜひ今夜聴いてみてはいかがでしょうか。
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